不調は「病気」ではなく「バランスの崩れ」
―― 病名がつかない不調をどう考えるか
外来でよくあるやり取りがあります。
「検査では異常なしと言われました」
「でも、ずっと調子が悪いんです」
こうしたケースは決して珍しくありません。
• 疲れが抜けない
• 眠りが浅い
• 集中できない
• 体が重い
• 気分が安定しない
• 胃腸が整わない
• 風邪をひきやすい
しかし検査では異常なし。
病名もつかない。
このとき多くの人が感じるのは、
「病気ではないなら、気のせいなのか?」
という戸惑いです。
ここで大切なのは、
不調=病気ではないという視点です。
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医療は「病気」を扱う仕組みでできている
現代医療は非常に優れています。
感染症、外傷、がん、重度の代謝疾患など、
明確な病態に対しては大きな成果を上げています。
その理由はシンプルです。
医療はもともと
病気を診断し、治療するための仕組み
として発展してきたからです。
つまり、
• 病名がつく
• 異常が数値で示せる
• 構造変化がある
という状態に対しては強い。
しかし、
• 病名がつかない
• 数値は正常
• 画像異常なし
という領域は、制度上扱いづらいのです。
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不調は“機能の揺らぎ”
身体は常にバランスの上で成り立っています。
• 自律神経のバランス
• 交感神経と副交感神経
• 炎症と抗炎症
• 酸化と抗酸化
• 合成と分解
• 同化と異化
• 覚醒と休息
これらはすべてシーソーのような関係です。
どちらかが強すぎても弱すぎても、
身体は不安定になります。
不調とは、
このバランスが崩れた状態
と捉えると理解しやすくなります。
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病気は“バランス崩壊の結果”
バランスが少し崩れた段階では、
• 疲れやすい
• 回復が遅い
• 集中できない
• 眠れない
といった機能的な不調が出ます。
しかし、
• 炎症が固定化
• 代謝が破綻
• ホルモンが崩壊
• 組織が傷む
という段階に進むと、
はじめて「病名」がつきます。
つまり、
不調は前半
病気は後半
という時間軸があります。
予防医療は前半を扱う医療です。
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なぜ「異常なし」なのに不調なのか
血液検査や画像検査は、
• 構造異常
• 明確な炎症
• 臓器障害
を見つけるのに優れています。
しかし、
• 神経の緊張状態
• 微細炎症
• 代謝の偏り
• 回復余力
• エネルギー効率
といった機能の揺らぎは、
数値だけでは捉えきれません。
そのため、
「異常なし」
=
「構造破綻なし」
であって、
「完全に健康」
ではないのです。
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バランスの崩れは“多層的”に起こる
バランスは一か所だけ崩れるわけではありません。
例えば、
•慢性的なストレス
→ 自律神経過緊張
→ 睡眠の質低下
→ 炎症増加
→ 代謝効率低下
→ 疲労蓄積
というように、連鎖的に広がります。
身体はネットワークです。
1つの偏りが
全体に波及します。
不調は単発の問題ではなく、
システム全体の歪みなのです。
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バランスは“量”ではなく“関係性”
よくある誤解は、
「何かが足りない」
「何かが多すぎる」
という単純な発想です。
もちろん栄養不足やホルモン不足はあります。
しかし多くの場合、
問題は“量”ではなく
関係性にあります。
• 交感神経が強すぎる
• 回復時間が足りない
• 炎症が消えきらない
• 代謝が追いつかない
この微妙なズレが
不調として現れます。
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バランスは「整える」対象
ここで重要なのは、
不調は壊れているのではなく、
偏っている
という視点です。
壊れていれば修理が必要ですが、
偏りであれば調整が可能です。
• 神経を緩める
• 炎症を抑える
• 代謝を整える
• 睡眠を回復させる
• エネルギー効率を高める
こうした調整で
バランスは戻ります。
これが予防医療の基本姿勢です。
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病名がないからこそ早い段階
不調は、
病名がつかないからこそ価値があります。
なぜなら、
まだ修正可能な段階
だからです。
病気になってからでは
構造変化が進み、
戻せる幅が狭くなります。
バランスの段階で整えることが、
将来の疾患リスクを下げます。
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おわりに:不調は“敵”ではない
不調は敵ではありません。
それは
• 調整が必要
• 余力が減っている
• 偏りがある
というサインです。
「病気ではない」と言われて終わるのではなく、
「どこが崩れているのか」を見る。
その視点が、これからの医療に必要です。





