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コラム

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血液検査では見えない“炎症”の正体

――老化と不調の根っこにある“静かな炎” ――

炎症と聞くと、多くの人がイメージするのは
痛み、腫れ、赤み、熱感といった
分かりやすく身体に現れる反応です。

しかし臨床で問題になることが多いのは
こうした急性炎症よりも
自覚症状のほとんどない「静かな炎症」です。

最近では
“Silent inflammation”
“Low grade inflammation”
“Chronic inflammatory tone”
など様々な呼び名がありますが、
本質はどれも同じです。

• 自覚がない
• 数値に出にくい
• 病名がつかない
• しかし確実に身体を蝕む
というタイプの炎症です。

そしてこの炎症は、
• 疲れやすさ
• 不眠
• 集中力低下
• 消化トラブル
• 免疫低下
• 体重増加
• 老化スピード
• 生活習慣病リスク
と非常に深く関わります。

炎症は「火事」ではなく「弱火」

炎症という言葉は
イメージ的に“火”に例えられます。

急性炎症はいわば
火事のような状態で、
• 熱
• 腫れ
• 痛み
• 赤み
といった分かりやすい反応が出ます。

しかし問題は火事ではなく、
「弱火でグツグツ煮込まれている状態」です。

弱火は煙を出し続け、
目に見えないレベルで建物(=身体)を痛めます。

“Low grade inflammation”は
まさにこの状態です。

なぜ血液検査では見逃されるのか

血液検査で炎症を見るとき
よく指標にされるのは
• CRP
• 白血球
• ESR
などの項目です。

しかしこれらは
急性炎症のマーカーです。

つまり、
火事には反応しますが
“くすぶり”には反応しづらいのです。

臨床ではよくあるケースとして、
CRP正常
白血球正常
ESR正常

→「炎症なし」と判断
しかし本人は明らかに不調

という矛盾が生まれます。

こうした場合、
問題になっているのは急性炎症ではなく
慢性的な低グレードな炎症です。

静かな炎症は「症状」を作らない

炎症というと症状があるのが普通だと思われています。

しかし慢性炎症の特徴は
• 痛くない
• 腫れない
• 赤くない
• 熱が出ない
という点です。

つまり
気づくタイミングが非常に遅いのです。

症状が出ないということは
「深刻ではない」ではなく、
むしろ
“全身の代謝の背景で常に燃えている”
という意味で厄介です。

炎症は老化の“燃料”になる

近年の老化研究では
炎症は老化の中心的な役割を担っていることが示されつつあります。

“inflammaging(炎症性老化)”
という概念が広く定着したのもそのためです。

炎症がある状態では、
• 代謝の歪み
• ミトコンドリア負担
• 自律神経緊張
• ホルモン低下
• 修復システム低下
• 免疫の偏り
といった変化が生まれます。

つまり
老化を加速させる土壌を作るのです。

炎症が続くと“治療が効きにくくなる”

臨床的に最も問題になるのはここです。

炎症が背景にあると、
• 栄養療法が効きにくい
• 点滴の効果が短い
• 睡眠が改善しにくい
• 筋トレの反応性が低い
• ホルモン療法が噛み合わない
といった現象が起こります。

改善しにくい身体

とは、炎症が背景にある身体と言い換えてもいいほどです。

予防医療ではこれを
“治療反応性”
という言葉で捉えます。

炎症の“原因”は一つではない

炎症の出どころは多岐にわたります。

代表的には
• 腸内(腸管炎症)
• 脂肪細胞(特に内臓脂肪)
• 歯科領域(歯周炎など)
• 大気・食品添加物
• 代謝負担
• 慢性ストレス
• 睡眠不足
• ミトコンドリアストレス
• 自律神経の過緊張
• 過剰な糖化反応(AGEs)
• 運動不足または過剰
など、複雑に絡み合っています。

炎症は
一つの原因ではなく、パターンで起きることが多いのです。

炎症は“数値”より“ネットワーク”で見る

炎症はもともと
免疫・代謝・神経・ホルモン・ミトコンドリア
と結びついたネットワーク反応です。

そのため
単独の数値で見える世界は限られています。

予防医療では
• 自律神経の緊張
• 代謝の偏り
• 回復力の低下
• 酸化ストレス
• 微細炎症
• エネルギー不足
などの“パターン”を見ます。

ここに
「数値ではなくパターンを見る」という前回のテーマと繋がりが出てきます。

炎症は“長い時間軸”で悪さをする

炎症は急性では派手ですが、
慢性になると静かです。

しかし静かであるほど
時間軸で悪さをします。
• 数ヶ月 → 不調
• 数年 → 老化
• 数十年 → 生活習慣病
という流れは
臨床では珍しくありません。

予防医療が重視するのは
まさにこの“時間軸”です。

おわりに:炎症は“見えないから無い”ではない

炎症は
数値に出ないと存在しないものとして扱われがちです。

しかし実際には
見えない炎症こそが、
不調と老化の背景に静かに存在しています。

身体の不調を考えるとき、
炎症を“有無”ではなく
“程度”や“質”として捉えること。

そして
単体の数値ではなく
“パターン”で理解すること。

これが予防医療の大切な視点です。