検査結果はゴールではない-なぜ予防医療では「オーダーメイド医療」が重要なのか
健康診断の結果を見て、
「すべて基準値内だったから大丈夫」
と安心した経験はないでしょうか。
あるいは反対に、
「この数値が高いから、このサプリメントを飲もう」
「腸内環境が悪いから、とにかく善玉菌を増やそう」
と、一つの検査結果だけを見て対策を決めてしまうこともあります。
しかし、人の体はそれほど単純ではありません。
同じ「疲れやすい」という症状でも、その背景には、
• 栄養不足
• 慢性炎症
• 腸内環境の乱れ
• ホルモンバランス
• ミトコンドリア機能
• 睡眠不足
• ストレス
など、まったく異なる原因が隠れていることがあります。
だからこそ当院では、「何の検査をするか」と同じくらい、「検査結果をどう読み、どう治療につなげるか」を大切にしています。
今回は、予防医療におけるオーダーメイド医療についてお話しします。
オーダーメイド医療とは?
オーダーメイド医療とは、一人ひとりの体質や検査結果、生活習慣などを考慮し、その人に合わせた医療を行う考え方です。
「個別化医療」「パーソナライズド医療」と呼ばれることもあります。
ただし、単に人によって薬やサプリメントを変えることだけがオーダーメイド医療ではありません。
重要なのは、
「なぜ今、この状態になっているのか」
を考えることです。
そして、その背景を理解したうえで、
「今、この人に何を優先するべきなのか」
を判断します。
同じ症状でも原因は違う
例えば「慢性的に疲れている」という3人の患者さんがいたとします。
Aさんは、鉄やビタミンB群などの栄養状態に問題があるかもしれません。
Bさんは、腸内環境の乱れと慢性炎症が背景にあるかもしれません。
Cさんは、睡眠やホルモン、ミトコンドリアのエネルギー産生に問題があるかもしれません。
症状は全員、
「疲れる」
です。
しかし、原因が違えば必要な治療も変わります。
ここに、オーダーメイド医療の意味があります。
「検査をすること」が目的になってはいけない
予防医療では、一般的な健康診断より多くの検査を行うことがあります。
当院でも必要に応じて、
• 分子栄養学的血液検査
• 尿有機酸検査
• 腸内環境検査
• フードアレルギー検査
• エピジェネティッククロック検査
• パーソナルコンディションチェック
• バイオリズムテスト
などを組み合わせています。
しかし、検査項目を増やせば健康になれるわけではありません。
検査はあくまで「現在地を知るための道具」です。
大切なのは、そこから何を読み取り、何を変えるかです。
私が大切にしているのは「データをつなげる」こと
一つひとつの検査結果を見ることは、それほど難しくありません。
難しいのは、
複数の検査結果を一人の患者さんの中でつなげて考えること
です。
例えば、
腸内環境検査で問題が見つかったとします。
それだけなら「腸を整えましょう」で終わってしまいます。
しかし同時に、
• 血液検査で炎症の兆候がある
• 有機酸検査でエネルギー代謝に偏りがある
• 睡眠の質が悪い
• 慢性的な疲労を感じている
という情報があれば、見えてくる景色は変わります。
腸の問題が全身の炎症や栄養状態、エネルギー代謝にまで影響している可能性を考える必要があります。
私は、検査を「点」で見るのではなく、「線」でつなげることが予防医療では非常に重要だと考えています。
「異常値」より「パターン」を見る
一般的な健康診断では、
基準値を超えているかどうかが重要になります。
これは病気を発見するうえで非常に大切です。
一方、予防医療ではもう一歩踏み込みます。
一つの数値だけではなく、
複数のデータから見えてくるパターン
を考えます。
例えば、
• 炎症が起きやすい
• 栄養がうまく利用できていない
• エネルギー産生が低下している
• 腸に負担がかかっている
• 回復力が低下している
といった状態です。
病名をつけることではなく、体がどちらの方向へ向かっているのかを考える。
これが予防医療ならではの視点です。
治療も「足し算」だけではない
検査で問題が見つかると、
「何を飲めばいいですか?」
「どんな点滴をすればいいですか?」
と聞かれることがあります。
もちろん、必要に応じてサプリメントや点滴療法などを取り入れることはあります。
しかし、私は治療を単純な足し算とは考えていません。
例えば、
• 睡眠不足を改善する
• 過剰な飲酒を減らす
• 食生活を見直す
• 腸に負担をかけているものを減らす
• ストレス環境を見直す
といった「引き算」が先に必要なこともあります。
何かを追加する前に、
「体の回復を邪魔しているものは何か」
を考えることも大切です。
同じ治療を全員に行わない理由
インターネットには、
「老化にはこれ」
「腸活にはこれ」
「疲労にはこのサプリ」
といった情報があふれています。
しかし、全員に同じ方法が適しているとは限りません。
例えば食物繊維一つをとっても、腸内環境によっては量や種類を慎重に調整した方がよい場合があります。
サプリメントも同様です。
必要な栄養素は、
• 年齢
• 食生活
• 消化吸収
• 腎機能や肝機能
• 服用している薬
• その他の検査結果
などによって変わります。
だからこそ、「良い治療を探す」のではなく、「自分に合った治療を探す」ことが重要なのです。
予防医療では「順番」も重要
もう一つ、私が診療で大切にしているのが治療の順番です。
例えば、栄養を大量に補充する前に腸内環境を整えた方がよい方もいます。
慢性炎症が強ければ、その原因を探ることを優先する場合もあります。
睡眠が極端に不足しているのであれば、まずそこから改善した方が治療全体が進みやすいこともあります。
つまり、
何をするかだけでなく、「何から始めるか」が重要なのです。
この優先順位を決めることも、オーダーメイド医療の重要な役割です。
検査→治療→再評価までが一つの医療
予防医療では、一度検査して終わりではありません。
当院が理想とする流れは、
評価 → 仮説 → 介入 → 再評価
です。
まず現在の状態を評価します。
そこから原因を考え、必要な治療や生活改善を行います。
そして一定期間後に再評価し、
「本当に体が変わったのか」
を確認します。
症状が改善していても、データが変化していないことがあります。
反対に、本人にはまだ大きな実感がなくても、検査では改善傾向が見えていることもあります。
だからこそ、
感覚とデータの両方を見ること
が重要です。
当院が目指している予防医療
私たちが目指しているのは、
単に病気を早く発見する医療ではありません。
また、検査をたくさん行ったり、サプリメントや点滴をたくさん使ったりすることが目的でもありません。
大切なのは、
その人の体を理解し、その人にとって必要なものを必要な順番で選ぶこと。
そして、
健康で活動できる時間=健康寿命をできるだけ長くすること。
そのために検査があり、治療があります。
検査結果はゴールではありません。
むしろ、
「これからどう健康をつくっていくか」を考えるスタート地点
なのです。
まとめ
オーダーメイド医療とは、単に一人ひとり違う治療をすることではありません。
• 症状
• 検査データ
• 生活習慣
• 体質
• 年齢
• その人が目指している健康状態
を総合的に考え、
「なぜこの状態なのか」「何を優先するべきなのか」
を判断する医療です。
検査を「点」で終わらせず、「線」でつなげる。
治療を「足し算」だけで考えず、必要なら「引き算」もする。
そして、治療後にはもう一度評価する。
この繰り返しこそが、私たちが考える予防医療です。
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