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サプリメントはなぜ人によって効き方が違うのか?―血液検査・腸内環境・有機酸検査から考える正しい選び方

「健康のためにサプリメントを飲んでいるけれど、本当に自分に必要なのか分からない」
「友人には効果があったのに、自分にはあまり実感がない」
「いろいろ飲んでいるうちに、サプリメントの数が増えてしまった」
診療をしていると、このような相談を受けることがあります。
ビタミン、ミネラル、アミノ酸、抗酸化成分など、現在は非常に多くのサプリメントが販売されています。
インターネットで検索すれば、
「疲労にはこれ」
「老化対策にはこれ」
「免疫にはこれ」
といった情報も簡単に見つかります。
しかし、同じサプリメントを同じ量飲んでも、すべての人に同じ結果が出るわけではありません。
なぜでしょうか。
その理由は、
一人ひとり、栄養状態も、吸収する力も、必要量も違うからです。
今回は、サプリメントの効果に個人差が生まれる理由と、予防医療におけるサプリメントの考え方について解説します。

サプリメントは「体に良いもの」ではなく「必要なもの」を選ぶ

まず大切なのは、
サプリメントは、たくさん摂れば健康になるものではない
ということです。
例えば、ある人にとって不足している栄養素があれば、それを適切に補うことには意味があります。
しかし、すでに十分に足りている人がさらに摂取しても、同じメリットが得られるとは限りません。
栄養素によっては過剰摂取が問題になることもあります。
つまり、
「何が体に良いか」よりも、「今の自分に何が必要なのか」
を考えることが重要なのです。

なぜサプリメントの効果には個人差があるのか?

同じ年齢、同じ性別でも、体の中の状態は一人ひとり異なります。
サプリメントの反応に違いが生じる背景には、いくつもの要因があります。

① もともとの栄養状態が違う
最も分かりやすいのが、栄養状態の違いです。
例えば鉄が不足している人と、十分に足りている人では、鉄を補充したときの反応は当然異なります。
ビタミンD、亜鉛、マグネシウム、ビタミンB群なども同様です。
そのため、症状だけを見て、
「疲れているからビタミンB群」
「免疫が心配だから亜鉛」
と単純に判断することはできません。

② 腸で吸収できているか
サプリメントは、飲めばそのまま体内で利用されるわけではありません。
多くの栄養素は消化管から吸収される必要があります。
そのため、
• 消化機能
• 腸内環境
• 腸管の炎症
• 胃酸や消化酵素の状態
などによって、栄養素の吸収や利用に差が生じることがあります。
どれだけ良い栄養素を摂っていても、十分に吸収・利用できていなければ期待した効果は得られません。
これは私が、
「栄養療法を考えるときには腸も見る必要がある」
とお伝えしている理由の一つです。

③ 「摂取量」と「体内で利用できる量」は違う
もう一つ重要なのが、代謝です。
栄養素は吸収されたあと、さまざまな酵素反応を経て体内で利用されます。
その過程では、別のビタミンやミネラルが必要になることもあります。
つまり、
「飲んでいる=使えている」ではありません。
この違いを考えるうえで、当院では必要に応じて尿有機酸検査なども活用しています。
有機酸のパターンを見ることで、エネルギー代謝や一部の栄養素利用について考える手掛かりが得られることがあります。

血液検査が「正常」でも栄養状態が十分とは限らない

健康診断で行われる血液検査は、病気の発見に非常に重要です。
一方、予防医療では同じ血液検査でも、基準値の内外だけではなく、複数の項目を関連づけて栄養状態を考えることがあります。
例えば、
• 血算
• 鉄関連項目
• タンパク質関連項目
• 肝機能
• 血糖関連項目
• 脂質
などを組み合わせて見ていきます。
ここで大切なのは、単一の数値だけから栄養欠乏を断定しないことです。
症状や食生活、服薬、他の検査結果なども含めて総合的に判断します。

「疲れているから鉄」は危険なこともある

サプリメントで特に注意したいのが、自己判断による過剰摂取です。
例えば鉄。
疲労感があるからといって、すべての人に鉄が必要なわけではありません。
鉄は生命に不可欠な元素ですが、過剰になると酸化ストレスなどの問題につながる可能性があります。
同様に、
• ビタミンA
• ビタミンD
• ビタミンB6
• 亜鉛
• セレン
なども、「健康に良いから多いほど良い」というものではありません。
不足も問題ですが、過剰も問題です。
だからこそ、可能な範囲で現在の状態を確認したうえで補うという考え方が重要になります。

サプリメント同士の「バランス」も重要

栄養素は単独で働いているわけではありません。
例えば、亜鉛を長期間多く摂取すると、銅の吸収に影響することがあります。
カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛などのミネラルも、互いの吸収や代謝に影響することがあります。
そのため、
「良いものを一つずつ追加していく」
という方法を続けると、いつの間にか全体のバランスが崩れてしまう可能性があります。
これは前回のコラムでお話しした、
「治療は足し算だけではない」
という考え方にもつながります。

薬を飲んでいる人ほど自己判断に注意する

サプリメントは食品として販売されているものが多いため、「薬より安全」というイメージを持つ方もいます。
しかし、サプリメントや健康食品でも、医薬品の作用や吸収・代謝に影響するものがあります。
特に複数の薬を服用している場合や、肝臓・腎臓の機能に問題がある場合などは注意が必要です。
治療中の病気がある方は、サプリメントを開始する前に医師や薬剤師へ相談することが大切です。

サプリメントを選ぶ前に「何が足りないのか」を考える

当院では、最初からサプリメントを決めるのではなく、
まず体の状態を評価すること
を大切にしています。
必要に応じて、
• 分子栄養学的な視点を含む血液検査・尿検査
• ホルモン検査
• 尿有機酸検査
• 腸内環境検査
• 食生活の評価
• 症状や生活習慣の確認
などを組み合わせます。
そして、
「何が不足している可能性があるのか」
だけではなく、
「なぜ不足しているのか」
まで考えます。
摂取量が少ないのか。
吸収できていないのか。
消費量が増えているのか。
代謝のどこかに負担がかかっているのか。
原因によって対策は変わります。

サプリメントより先に改善するべきこともある

検査で栄養状態に問題が見つかったとしても、必ずサプリメントが第一選択になるとは限りません。
例えば、
• 食事内容
• 睡眠
• 飲酒
• 運動
• 腸内環境
を見直す方が先の場合もあります。
食事で十分に補えるのであれば、まず食事を改善する。
腸に問題があるのであれば、栄養を大量に追加する前に腸内環境を整える。
睡眠不足によって疲労しているのであれば、サプリメントだけで解決しようとしない。
原因に対して介入することが重要です。

サプリメントは「目的」ではなく「手段」

私はサプリメントそのものを否定しているわけではありません。
適切に使用すれば、食事だけでは補いにくい栄養素を補完する有用な選択肢になることがあります。
しかし、サプリメントを飲むこと自体が目的になってはいけません。
目的は、
体の機能を整え、より健康な状態をつくること
です。
そのためには、
評価 → 必要性の判断 → 介入 → 再評価
という流れが重要です。
数か月後にもう一度状態を確認し、必要がなくなれば減らす。
必要なら量や組み合わせを調整する。
これが、私たちが考えるオーダーメイドの栄養療法です。

まとめ

サプリメントの効果に個人差があるのは、私たちの体が一人ひとり違うからです。
• 栄養状態
• 腸内環境
• 消化吸収
• 代謝
• 生活習慣
• 服薬状況
が違えば、必要な栄養素や量も変わります。
だからこそ、
「何を飲めば健康になるのか」ではなく、「今の自分には何が必要なのか」
を考えることが大切です。
そして、さらに重要なのは、
「なぜそれが必要な状態になっているのか」
を探ることです。
サプリメントは健康をつくるための一つの手段。
検査や診察を通して現在の体を理解し、必要なものを必要な量だけ使う。
それが、予防医療におけるサプリメントの基本的な考え方です。

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