スポーツ遺伝子検査は「自分にあった運動」がわかる
今回は前回の続きで「スポーツ遺伝子検査」の詳細について解説したいと思います。
遺伝子検査の結果でどのようなスポーツが適しているのか、お話していきます。
スポーツ遺伝子検査で着目する遺伝子は以下の3つになります。
①ACTN3遺伝子
②ACE遺伝子
③PPARGC1A遺伝子
それぞれの遺伝子でわかることについて説明いたします。
ACTN3遺伝子
ACTN3遺伝子は、運動を行う人が最も気にする遺伝子の1つで、「速筋」や「遅筋」の能力に関係している遺伝子です。(僕はこの遺伝子を持っていました)
その中でも注目すべきなのは、速筋繊維にのみ存在している「α-アクニチン3」という物質です。「α-アクニチン3」が筋繊維にたくさん存在すると速筋(白筋)の働きが安定するため、瞬発系の運動能力が高くなると考えられます。
そのため短距離走が速かったり、瞬間的なパワーを出す運動に優れていたり、重いものを持ち上げたり、遠くに飛ばしたりする選手は「α-アクニチン3」が多く存在している可能性が高いです。
この「α-アクニチン3」は、日本人では以下の3つのタイプに分かれており、その量によって速筋・遅筋の割合が変わってきます。
R/R型(1型):「α-アクニチン3」が最も多い(速筋が多い):19%
R/X型(2型):「α-アクニチン3」が適度にある(速筋と遅筋が備わっている):54%
X/X型(3型):「α-アクニチン3」が無い(遅筋が多い):27%
東京大学の石井直方教授によれば、「速筋を遅筋に変えることはできるが、遅筋を速筋に変えることはできない」とのこと。
つまり、もともと速筋が無い人・少ない人は、遅筋を速筋に変えることはできないので努力しても短距離走のタイムを縮めたり瞬発力を高めたりすることは難しいということです。
なんだか悔しいですが、これは遺伝子で決められたことのようです。
「α-アクニチン3」が最も多い群であるACTN3遺伝子R/R型は、短距離選手にとても多いというデータがあります。この上位19%に属する速筋繊維を多く持つ体質の人は、短時間で爆発的なパワーを生み出すスプリンターの素質を持っています。
スピードスケートのトップ選手や短距離水泳の選手を対象に調査した結果、遅筋が多い「X/X型」の選手は一人もいなかったという研究結果もあります。「スプリンターは生まれつきスプリンターである」と呼ばれる所以は、ACTN3遺伝子にあるのかもしれません。ウサイン・ボルトのようなトップスプリンターはこのACTN3遺伝子がR/R型なのかもしれませんね。
ちなみに僕はR/R型でした。今思い返せば、小学校の頃なんの運動もしていませんでしたが毎年必ずリレーの選手に選ばれ、学校代表にも選ばれたのはこの遺伝子のおかげかも知れません。
ACE遺伝子
ACE遺伝子は、血液の供給量を調整する役割を担っています。血管を収縮させたり、拡張させたりして全身の筋肉へ酸素や栄養を届けています。運動時の疲れやすさにも関係しており、血管収縮能が高いと、瞬間的に血液を供給することが可能です。
瞬発系の能力には短時間で多くの血液を送り込む必要があるので、血管収縮能が高いと瞬発力を要する運動(短距離走やサッカー・バスケなどの瞬時に判断して動くスポーツなどでしょうか)で力を発揮します。
一方、血管拡張能(=血管収縮能の逆)が高いと、筋肉へ酸素や栄養を持続的に送り届ける力が優れているため、運動による疲労を感じにくく持久系の運動(マラソン、水泳、自転車など)に適しています。
I/I型:血管拡張性能が高い:持久系向き、疲れにくい:40%
I/D型:血管拡張性能は標準:標準 :49%
D/D型:血管収縮性能が高い:瞬発系向き、瞬間的に血液を供給:11%
I/I型は血管の拡張する能力が高く血管が太いので、大量の血液を一気に体に流すことができます。タバコを吸うと血管が収縮して細くなってしまいますが、それとはまったく逆のイメージです。
イギリスの研究グループが、標高7000m以上の山を酸素マスクを使わずに制覇した登山家25人に対してACE遺伝子を調査したところ、I/I型が23人でD/D型は非常に少なかったそうです。さらに条件を厳しくし、標高8000m以上の無酸素登頂成功者で調査をしたところ、D/D型は一人もいなかったという報告があります。
また、イギリスの軍人78人を10週間かけて持久力トレーニングを行った後に15kgのバーベルで肘屈曲持続時間の変化を見たところ、I/I型はD/D型に比べて11倍の筋持久力改善を認めました。(筋持久力とは繰り返しの負荷を何回続けられるかという筋肉の持久力のことです)
ボート選手や陸上の長距離選手のACE遺伝子を調べた結果、上位の競技者は一般人と比べてI/I型の割合が高い傾向にあることがわかっています。一方、トップの競泳選手はD/D型の比率がとても高いという研究結果も出ています。
とはいえ、ACE遺伝子に関する研究は過渡期でまだまだ解明されていない部分も多いです。今後のさらなる研究が期待されるところです。
なお僕はI/I型だったので持久系の運動が向いていそうです。(走るのは好きではないのですが…)今後は意識して持久系のトレーニングも行っていこうと思います。
PPARGC1A遺伝子
PPARGC1A遺伝子は、骨格筋中のミトコンドリア生成やミトコンドリアの機能を調節する「PGC-1αタンパク質」の遺伝子です。
「PGC-1αタンパク質」の活性が高い人は、運動することでミトコンドリアがドンドン増殖していきます。ミトコンドリアが増えればそれだけエネルギー効率が高まり持久力がつくため、練習を繰り返すことで能力が伸びるかどうかの成長スピードに関係しています。
毎日同じような練習をしたとしても、この特性により持久力が伸びやすかったり、伸びにくかったりします。
しかし、時間をかけて練習を積み重ねていけば、たとえ活性の低い人だって、同じようにミトコンドリアを伸ばしていけるので諦めてはいけません。
ミトコンドリアが増殖すると運動するためのエネルギー産生量が高く保持されるので、長時間のマラソンのように、多くのエネルギーを必要とする運動の際は特に必要とされます。「PGC-1αタンパク質」の遺伝子は、以下の3つのタイプに分かれています。
G/G型:活性が高い:27%
G/S型:活性が普通:50%
S/S型:活性が低い:23%
日本人におけるG/G型の割合は27%であり、彼らは非常に高いミトコンドリア増殖能を持っています。運動の継続によりエネルギー産生量も高く、運動強度を高めても長時間効率よく運動が行えます。したがって、持久系の運動が比較的楽に行なえる群であると言えます。
僕はG/G型の遺伝子でした。確かに、運動で他の人が疲れて脱落していくなか、持続できていた気がします。
ちなみにS/S型だから運動が向いていないというわけではなく、地道な練習で改善する可能性は勿論あります。ただし短期間で能力向上のリターンは、大幅には見込めない傾向にあるということになります。
何年も練習しても持久力の向上が見られない場合はS/S型なのかもしれません。反対に「運動をはじめて1年で表彰台」というパターンはG/G型なのかもしれません。
いずれにせよ、スポーツ遺伝子検査を受けずして、才能なのか努力なのか判別することはできません。
また忘れてはならないのは、能力を開花させるためには常に努力と練習が必要になってくるということです。すぐに向上する体質(G/G型)だからといって、怠けていたら能力は勿論衰えていきます。
自分自身がどのタイプに属するかは、検査をしなければわかりません。練習を頑張っているのに能力の向上がなかなか認められいという際も、自身の遺伝子タイプを知っていれば、諦めずに練習を継続するという判断をすることも可能です。
スポーツ適正の他、ダイエットの精度向上にも効果あり
このように、スポーツ遺伝子検査を受けることで、スポーツをするために特に重要な3つの遺伝子の傾向から身体的要素を明確に知ることができます。当クリニックではその結果を踏まえて、その人に合ったスポーツやトレ-ニング法、食事法を説明しています。
なおスポーツ遺伝子検査はダイエットの精度向上にも効果を発揮します。とくにダイエットの一環として運動・スポーツを取り入れている方におすすめです。スポーツ遺伝子とともにダイエット遺伝子の検査のセットもありますので、効率的にダイエットをしたい、自分にあったダイエット法を探しているという際には、あわせて受けてみるとよいでしょう。
スポーツ遺伝子検査 16,500円
ダイエット遺伝子検査 16,500円
スポーツ遺伝子・ダイエット遺伝子検査セット 29,700円
※全て税込価格。結果説明時に診断料11,000円が別途必要となります。
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